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向井行政書士事務所
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行政書士と社会保険労務士の境界

 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする事ができます。しかし、官公署に提出書類ならどのようなものでも作成できるわけではありません。行政書士法に「その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。」と定められているからです。行政書士の業務制限が他の法律に委ねれられている事も、行政書士の業務制限について特徴的なことでもあります。
 さて、そうした行政書士の業務制限の代表的なものの一つに、社会保険労務士の業務があります。社会保険労務士の業務範囲は「社会保険労務士法」において規定されています。社会保険労務士の業務範囲は明文化されていますので、社会保険労務士法に規定された業務は行政書士は行うことができないことになります。では、具体的にどのような業務があるのか、見てみましょう。

社会保険労務士の業務

まず、社会保険労務士法には、次の規定があります。行政書士のみならず、司法書士・税理士等の他の資格でも行ってはならない業務が明文化されています。

社会保険労務士法
(業務の制限)
第二十七条  社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第二条第一項第一号から第二号までに掲げる事務を業として行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない。

行ってはならない範囲が明確になりました。社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務が行ってはならない業務です。しかしこれだけでは何のことか良くわかりませんから、もう少し具体的に見てみます。

社会保険労務士法
(社会保険労務士の業務)
第二条  社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
  •  別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、異議申立書、再審査請求書その他の書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識できない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)をいう。以下同じ。)を作成すること。
  • 一の二  申請書等について、その提出に関する手続を代わつてすること。
  • 一の三  労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、報告、審査請求、異議申立て、再審査請求その他の事項(厚生労働省令で定めるものに限る。以下この号において「申請等」という。)について、又は当該申請等に係る行政機関等の調査若しくは処分に関し当該行政機関等に対してする主張若しくは陳述(厚生労働省令で定めるものを除く。)について、代理すること(第二十五条の二第一項において「事務代理」という。)。
  • 一の四  個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律 (平成十三年法律第百十二号 )第六条第一項 の紛争調整委員会における同法第五条第一項 のあつせんの手続及び雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 (昭和四十七年法律第百十三号)第十八条第一項 の調停の手続について、紛争の当事者を代理すること。
  • 一の五  地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第百八十条の二 の規定に基づく都道府県知事の委任を受けて都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第一条 に規定する個別労働関係紛争(労働関係調整法 (昭和二十一年法律第二十五号)第六条 に規定する労働争議に当たる紛争及び特定独立行政法人等の労働関係に関する法律 (昭和二十三年法律第二百五十七号)第二十六条第一項 に規定する紛争並びに労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争を除く。)をいう。以下単に「個別労働関係紛争」という。)に関するあつせんの手続について、紛争の当事者を代理すること。
  • 一の六 個別労働関係紛争(紛争の目的の価額が民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)第三百六十八条第一項 に定める額を超える場合には、弁護士が同一の依頼者から受任しているものに限る。)に関する民間紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律 (平成十六年法律第百五十一号)第二条第一号 に規定する民間紛争解決手続をいう。以下この条において同じ。)であつて、個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するものが行うものについて、紛争の当事者を代理すること。
  •  労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含み、申請書等を除く。)を作成すること。
  •  事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること。

要約すると、別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令に関する業務と、個別労働紛争に関する業務は、社会保険労務士の業務だと言うことです。上記で青字になっている3号の業務は制限がないのですね。では、別表第一はどのような法令を掲げているのでしょうか?

社会保険労務士法
別表第一 (第二条関係)
  • 一 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)
  • 二 労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)
  • 三 職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)
  • 四 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)
  • 五 労働保険審査官及び労働保険審査会法(昭和三十一年法律第百二十六号)
  • 六 独立行政法人労働者健康福祉機構法(平成十四年法律第百七十一号)
  • 七 職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)
  • 八 駐留軍関係離職者等臨時措置法(昭和三十三年法律第百五十八号。第十条の二の規定に限る。)
  • 九 最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)
  • 十 中小企業退職金共済法(昭和三十四年法律第百六十号)
  • 十一 国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法(昭和五十二年法律第九十四号)
  • 十二 じん肺法(昭和三十五年法律第三十号)
  • 十三 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)
  • 十四 独立行政法人雇用・能力開発機構法(平成十四年法律第百七十号)
  • 十五 激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和三十七年法律第百五十号。第二十五条の規定に限る。)
  • 十六 労働災害防止団体法(昭和三十九年法律第百十八号)
  • 十七 港湾労働法(昭和六十三年法律第四十七号)
  • 十八 雇用対策法(昭和四十一年法律第百三十二号)
  • 十九 炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法(昭和四十二年法律第九十二号)
  • 二十 労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四年法律第八十四号)
  • 二十の二 家内労働法(昭和四十五年法律第六十号)
  • 二十の三 勤労者財産形成促進法(昭和四十六年法律第九十二号)
  • 二十の四 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号)
  • 二十の五 沖縄振興特別措置法(平成十四年法律第十四号。第七十八条及び第八十一条の規定に限る。)
  • 二十の六 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)
  • 二十の七 作業環境測定法(昭和五十年法律第二十八号)
  • 二十の八 建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和五十一年法律第三十三号)
  • 二十の九 賃金の支払の確保等に関する法律(昭和五十一年法律第三十四号)
  • 二十の十 本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法(昭和五十六年法律第七十二号。第十六条(第十八条の規定により読み替える場合を含む。)及び第二十条の規定に限る。)
  • 二十の十一 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)
  • 二十の十二 地域雇用開発促進法(昭和六十二年法律第二十三号)
  • 二十の十三 中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律(平成三年法律第五十七号)
  • 二十の十四 介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成四年法律第六十三号)
  • 二十の十五 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成四年法律第九十号)
  • 二十の十六 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号)
  • 二十の十七 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)
  • 二十の十八 林業労働力の確保の促進に関する法律(平成八年法律第四十五号。第十三条の規定に限る。)
  • 二十の十九 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
  • 二十の二十 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律
  • 二十の二十一 石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号。第三十八条及び第五十九条の規定に限る。)
  • 二十一 健康保険法(大正十一年法律第七十号)
  • 二十二 船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)
  • 二十三 社会保険審査官及び社会保険審査会法(昭和二十八年法律第二百六号)
  • 二十四 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)
  • 二十五  国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)
  • 二十六 国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)
  • 二十七 独立行政法人福祉医療機構法(平成十四年法律第百六十六号。第十二条第一項第十二号及び第十三号並びに附則第五条の二の規定に限る。)
  • 二十八 石炭鉱業年金基金法(昭和四十二年法律第百三十五号)
  • 二十九 児童手当法(昭和四十六年法律第七十三号)
  • 三十 老人保健法(昭和五十七年法律第八十号)
  • 三十一 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)
  • 三十二 前各号に掲げる法律に基づく命令
  • 三十三 行政不服審査法(前各号に掲げる法令に係る不服申立ての場合に限る。)

以上が、行政書士が扱ってはいけない社会保険労務士の業務のリストです。

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